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みなさんで召し上がってください。一同  (高橋君1)

「佐藤さん、ちょっとよろしいですか。」

 

「ん?高橋君か。しっ、しっ。俺は今忙しいんだ。」

 

「水着を着た女性の画像を凝視しているところ失礼しました。改めます。」

 

「なんだ君は。それは俺に嫌味を言っているつもりか。君にはわからないだろうが、俺はこうやって右脳を刺激するイメージを閲覧しながら左脳を使って高度な論理的思考を展開しているんだ。」

 

「でしたらなおのこと、休憩しませんか。そのお誘いにきました。」

 

宮刑?君も随分と過激なことを言うね。で、誰を処すの。」

 

「おっしゃる意味がよくわかりませんが、休憩室にチョコレートがありますよ。」

 

「君、そんなチョコレートごときで俺を誘うなんて、小学生じゃないんだから。やれやれ、俺も安く見られたものだ。消えろ。」

 

「休憩室に、女子社員の皆さんから頂いたバレンタインのチョコレートがあるんですよ。佐藤さんが行かないなら僕一人で行ってきますが。」

 

「行こう。今すぐ行こう。おい早くしろ。走るぞ。」

 

「走りません。」

 

 

『みなさんで召し上がってください。一同』

 

 

「ふーん。これ?」

 

「はい。まだ誰も食べてませんね。こういうのって、誰かが手を付けないと食べづらいんですよね。」

 

「なんだ。みなさんで召し上がってくださいって、こんな少ししかないのに偉そうだな。大体なんだこのゴヂラって。」

 

「佐藤さん、これはゴヂラではなくゴディヴァです。よく見てください。」

 

「ごちゃごちゃうるさいやつだな。君はいつから俺に説教できるほど偉くなった。うーん、まあまあかな。うん、こっちはうまいな。」

 

「あっ、佐藤さん。だめですよ。何考えてるんですか。これ一粒いくらすると思ってるんですか。高いんですよ。それをもう3つも。」

 

「あっ、高橋さん!」

 

「ああ、坪井さん、こんにちは。」

 

「高橋さん、チョコレート食べてくれましたか?昨日の帰りに私が代表して買ってきたんですよ。私はトリュフ グランマニエが好きだから高橋さんにもそれを食べてもらいたいなあって。」

 

「ああ、グランマニエなら今佐藤さんが。」

 

「げ。」

 

「ん?ああ1坪3.3平米か。居たの。」

 

「さ、佐藤さんもいたんですか。」

 

「さっき、吉井さんから休憩室にチョコレートがあると伺ったので佐藤さんをお誘いして来たんですよ。」

 

「げげ。」

 

「これ初めて食べたけどまあまあ美味しいね。75点くらいかな。」

 

「キモ。」

 

「キモ?」

 

「いえ、気持ちだけですが。」

 

「うん、本当に気持ちだけだよね。こんなちょっとしか入っていないんじゃ。もうあとこんだけしかないよ。」

 

「佐藤さん、あんたいくつ食べたんですか。」

 

「高橋君、どうした。あんたって、君らしくもない。おや、1坪3.3平米、どうした。手がぶるぶる震えているよ。禁断症状か?」

 

「ブッコロス。」

 

「え?」

 

ブロッコリー。今日帰りにブロッコリー買わないと。」

 

「なんだ急に。何を言っているんだ、君。やっぱり禁断症状で譫妄が出てるんじゃないのか。」

 

「失礼します。」

 

「高橋君、何だあれ。訳のわからないことを言ったと思ったら急にいなくなって。辛い担々麺食べて下痢でもしてるんだろうか。」

 

「佐藤さん、せめて僕にも一つくださいよ。」

 

「何だ君は、俺が坪の心配をしている時にさもしいやつだな。まあいい、食べたまえ。」

 

「って、これじゃあもうみなさんで食べる分がないでしょうが。」

 

「あ、ほんとだ。まあいいや。この張り紙ごと捨ててなかったことにしよう。」

 

「なるわけないでしょう。吉井さんがみなさんにアナウンスしてたんだから。坪井さんも佐藤さんが貪っているところを目撃したわけですし。」

 

「じゃあ、君、おかしのまちおかでダースかなんか買ってきなさい。」

 

「なんで僕が。そもそもゴディヴァのチョコがダースになってたらおかしいでしょう。」

 

「いちいち細かいやつだな。わかった、高橋君、君に大切なことを教えてやろう。このチョコレート、女子社員から男子社員への付け届けという体裁になっているが、その実、女子社員からこの俺ただ一人に贈られたものなのだ。女子社員たちはすべからく俺に渡したくて仕方がないが社内政治上止むを得ず全員に配布しているのだ。君たちはそのおこぼれにあずかっているにすぎない。」

 

「佐藤さん、言っていることが押尾まぶす元受刑者みたいですよ。」

 

「ほら、食え、高橋君。最後の1個だ。俺はもう食べ過ぎて食べられないから君にやる。食ったら行くぞ。俺は忙しいんだ。」

 

「最後の1個って、どういうこと、あっ、チョコレートをポケットに直接入れちゃだめですよ。」

 

「ほら食え。ほらほら。」

 

「うわ、無理やり口に突っ込まないで。あ、誰か来ますよ。これはまずい、非常にまずい。僕の責任ではないが、色々と非常にまずい。佐藤さん、とにかく逃げましょう。」

 

「だからさっきからもう行くぞって言っているじゃないか。おかしな奴だ。

おかしなで思い出したが、ちゃんとおかしのまちおかに行って代替品を用意しておけ。」

 

「困った人だ。」